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店主のひとり言

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夜目、遠目、マスクの内 8月 9日

先日文学者の外山滋比古氏の訃報に目が留まりました。
恥ずかしながら氏の名著「思考の整理学」を読んでおりました。数年前に東大生や京大生の六割が読んでいると知り、どんなものかと購入しました。「平易に綴られている」との紹介でしたが、私にはどうもとっつきが悪く、途中で挫折してしまいました。再び挑戦したのは昨年でしたでしょうか。漸く完読。「アナロジー」「コンテクスト」等恥ずかしながら私の語彙に無い言葉を辞書で調べながら読み進みました。幸か不幸か論文を書くような機会は有りませんので、メインテーマに深く興味を引かれることはありませんでしたが、引用されていた「馬上、枕上、厠上」「夜目、遠目、笠の内」等の諺は記憶に留まりました。殊に女性が美しく見える状況を現した後者には上手いことを言うと感じました。見えない部分は想像で描いてしまうということと理解しましたが、このコロナ騒動の最中図らずも実感することとなりました。妙齢の女性を相手に仕事をさせて頂いたのですが、彼女はいつも大きなマスクをしていました。見えるのは顔の輪郭と目元だけです。涼しげな目元、落ち着いた物腰、少し勝気できりりとした物言いが何とも好ましく、見えない部分はこんな具合と自分の中で凄いべっぴんさんを描いておりました。幾度かお会いするうちに偶々マスクを外される機会が有り、想像とやや異なる素顔を覗いてしまいました。成る程です。時節柄こんな体験する方が多かったりするのではないでしょうか?そこで諺をアップデートして「夜目、遠目、マスクの内」としてみましたがどうでしょうか?ひょっとしたら外山先生は伝えたかったこととかけ離れた感想に泉下で嘆息しているでしょうか?申し訳ございません。私のおつむのレベルではこんなところです。どうぞ安らかにお眠りください。